ファクタリング会社と裁判

ファクタリングは、売掛金を早期に資金化できる手段として、多くの企業に利用されています。しかし、その一方で、契約内容の不透明さや手数料の問題、取り立てのトラブルなどが原因となり、ファクタリング会社と企業の間で裁判に発展するケースも少なくありません。特に、資金繰りに苦しむ企業が焦って契約を結んだ結果、予想外のリスクを抱えてしまうこともあります。本稿では、ファクタリングに関する裁判の事例や発生する原因、企業が注意すべきポイントについて詳しく解説します。
ファクタリング会社と裁判になる主な原因

ファクタリングを利用した企業が、ファクタリング会社と裁判で争うことになる原因はさまざまですが、主に以下のようなケースが多く見られます。

  1. 高額な手数料の請求

ファクタリングの手数料は、業者によって大きく異なりますが、一般的には売掛金額の5~30%程度が相場とされています。しかし、一部の悪質な業者では、契約時には低い手数料を提示しながら、実際の契約後に高額な追加費用を請求するケースがあります。企業側が「こんなに高額な手数料は聞いていなかった」として契約の無効を求める訴訟を起こすことがあります。

  1. 違法な取り立て行為

ファクタリングは、あくまで売掛金の譲渡であり、融資とは異なります。しかし、一部の業者は貸金業者のように強引な取り立てを行うことがあり、これが裁判沙汰になることがあります。例えば、企業の取引先に直接連絡を入れ、「この売掛金は当社が回収する」と圧力をかけるような行為が問題視されることがあります。

  1. 契約内容の不明確さ

ファクタリング契約の中には、企業にとって不利な条項が含まれていることがあります。例えば、企業が売掛先からの入金を遅らせた場合に高額な遅延損害金を請求する条項や、売掛金の回収が不可能になった場合に全額を企業が負担しなければならない契約などです。こうした不当な契約条項が裁判で争われることがあります。

  1. 二重譲渡によるトラブル

売掛金を複数のファクタリング会社に譲渡する「二重譲渡」は違法ですが、資金繰りに苦しむ企業が複数の業者から資金調達を行おうとするケースもあります。これが発覚すると、どのファクタリング会社が正当な権利を持つのかが争われることになり、裁判に発展することがあります。

  1. 売掛債権の不存在

ファクタリングは、売掛金という「実際に発生している債権」を売却する取引です。しかし、一部の企業が架空の売掛金を作り出し、ファクタリング会社に売却する詐欺行為が問題になることがあります。この場合、ファクタリング会社が企業を相手取って訴訟を起こすケースが多いです。
裁判の流れ

ファクタリング会社との裁判は、一般的な民事訴訟の手続きに従って進められます。裁判に至るまでの主な流れは以下の通りです。

  1. 内容証明郵便の送付

裁判の前段階として、企業側またはファクタリング会社側が、契約違反や未払い金の請求を内容証明郵便で通知することが一般的です。ここで双方の話し合いがまとまれば、裁判には至りません。

  1. 訴訟の提起

話し合いが決裂した場合、一方が裁判所に訴訟を提起します。企業側が「契約の無効」を求める場合もあれば、ファクタリング会社が「未払い金の支払い」を求める場合もあります。

  1. 争点の整理と証拠提出

契約書、請求書、メールのやり取りなどの証拠が提出され、裁判所が争点を整理します。特に、契約時の説明が適切に行われていたかどうかが大きなポイントになります。

  1. 和解交渉

裁判の途中で、双方が和解に向けた話し合いを行うこともあります。裁判に勝訴したとしても、相手が支払い能力を持たない場合は回収が難しくなるため、現実的な解決策として和解が選択されることもあります。

  1. 判決の言い渡し

最終的に、裁判所が判決を下します。契約の無効や、手数料の減額、損害賠償の請求など、ケースによってさまざまな判決が出されます。
裁判を避けるための対策

ファクタリングを利用する際には、裁判に発展しないように事前にリスクを回避することが重要です。企業が注意すべきポイントをいくつか挙げます。

  1. 契約内容を慎重に確認する

契約書をしっかりと読み、不明点があれば必ずファクタリング会社に確認しましょう。特に、手数料の計算方法や追加費用の有無、債権回収の責任について明確にすることが重要です。

  1. 信頼できるファクタリング会社を選ぶ

違法業者との取引を避けるため、実績のあるファクタリング会社を選ぶことが大切です。金融庁や消費者センターに相談し、口コミや評判を確認するのも有効です。

  1. 取引の記録を残す

後から「そんな説明は受けていない」と言われないよう、契約内容ややり取りの記録を残しておきましょう。

  1. 早めに専門家に相談する

トラブルの兆候が見えたら、弁護士や専門家に相談し、適切な対策を講じることが重要です。
まとめ

ファクタリングは、正しく利用すれば資金繰りの助けになりますが、契約内容の不明瞭さや悪質な業者との取引によって、裁判沙汰になるリスクもあります。企業は、契約の際に細心の注意を払い、問題が生じた場合は速やかに専門家に相談することが大切です。裁判に発展する前に、トラブルを未然に防ぐ努力をすることが、企業の健全な経営につながるでしょう。