うどん県を支える製麺所は、小麦価格や燃料費の高騰のなか、観光にも貢献する

香川県 食品加工業 創業65年

 香川県で製麺業を営んでいる当社は、創業から半世紀以上にわたって地元のうどん文化を支えてきました。職人の手による確かな技術と、厳選した小麦を使った麺作りを誇りに、地元の飲食店や土産物店、さらには県外のスーパーや百貨店にも商品を提供しています。近年は、訪日観光客の増加に伴い、うどんの需要も伸びており、生産量自体は確実に増加していました。しかし、事業の拡大に伴う喜びの裏で、私たちは大きな課題に直面していました。

 ここ数年、小麦の価格が高騰し続けています。特に輸入小麦の値上がりが顕著で、円安の影響も相まって、仕入れコストは大幅に上昇しました。うどんの麺作りにおいて、小麦は最も重要な原材料です。その価格が上がることで、利益率は年々縮小していました。さらに、燃料費や配送コストの上昇も経営を圧迫し、思うように利益を確保できない状況が続いていました。

 一方で、観光インバウンドの恩恵もあり、売上自体は伸びています。県内の有名店では、海外からの観光客が列をなしてうどんを楽しむ姿が見られ、それに伴い飲食店からの麺の注文も増えていました。しかし、いくら生産量を増やしても、利益が思うように出ないという現実に頭を悩ませていました。

 根本的な解決策として、麺の卸価格の引き上げを検討しました。しかし、地元の飲食店にとってもコストの上昇は深刻な問題であり、価格改定に対する反発は大きいものでした。「これ以上、仕入れ値が上がるとやっていけない」と言われることも少なくありません。私たちとしても、長年の取引先との関係を大切にしたい思いが強く、無理な値上げを強行することは難しいと感じていました。

 そんな状況の中、資金繰りの厳しさが増していきました。材料の仕入れ費用の支払いが先に発生する一方で、卸先からの売掛金の回収には一定の期間を要します。そのタイムラグによって、手元資金が一時的に不足する事態が発生し、今後の仕入れに影響が出る可能性が高まっていました。

 そこで、知人の紹介を受け、初めてファクタリングを利用することを検討しました。これまでの資金調達といえば、銀行融資が中心でしたが、審査には時間がかかる上、借入れが増えることには抵抗がありました。一方、ファクタリングは、既に発生している売掛金を売却することで、早期に資金化できる仕組みです。借入れではないため、負債を増やすことなく資金を確保できる点に魅力を感じました。

 ファクタリング会社の担当者と相談を重ねた結果、2社間ファクタリングを利用することに決めました。取引先に知られることなく手続きを進められる点が大きな決め手となりました。契約を結んでから資金が振り込まれるまでのスピードも早く、想像以上にスムーズに資金調達を行うことができました。

 これにより、仕入れ資金の確保が可能となり、当面の資金繰りの不安を解消することができました。もちろん、ファクタリングは一時的な資金繰りの手段であり、根本的な経営課題を解決するものではありません。それでも、今回の利用を通じて、資金繰りの選択肢が広がったことは大きな収穫でした。

 今後は、単なる売上拡大だけでなく、利益率を意識した経営をより強く意識していく必要があります。例えば、原材料の仕入れルートを見直し、コストを抑えられるよう交渉することや、自社ブランド商品の開発に力を入れ、価格競争に巻き込まれにくい販売戦略を構築することが求められます。さらに、インバウンド需要の高まりを活かし、海外向けの販路開拓にも挑戦していきたいと考えています。

 ファクタリングは、適切に活用すれば、資金繰りの問題を一時的に解決し、事業を安定させるための有効な手段となります。今回の経験を踏まえ、今後も資金管理を慎重に行いながら、持続可能な経営を目指していきたいと考えています。香川のうどん文化を支える一員として、これからも誠実なものづくりを続けていく決意を新たにしました。

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