- 多重譲渡(重複譲渡)とは何か?
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、早期に資金を調達する金融手法です。しかし、悪意を持った事業者が同じ売掛金を複数のファクタリング会社に譲渡する「多重譲渡(重複譲渡)」が問題視されています。これは、売掛金が1つしか存在しないにもかかわらず、それを複数の会社に売却する行為を指し、法的に大きな問題を引き起こします。
- 多重譲渡の違法性と民事上のリスク
多重譲渡は民法上、契約違反や詐欺行為に該当する可能性があります。売掛金の譲渡契約を締結した時点で、売掛金の権利はファクタリング会社に移転します。したがって、同じ売掛金を他のファクタリング会社に再び譲渡することは、二重売却にあたり、最初の譲渡契約に違反する行為となります。
また、多重譲渡が発覚した場合、ファクタリング会社間で売掛金の真正な所有者を巡るトラブルが発生し、法的手続きが必要になるケースもあります。この場合、最初に譲渡通知を行った会社が優先されることが一般的ですが、契約内容や通知のタイミングによっては争いが生じる可能性があります。
- 刑事上の責任
多重譲渡は単なる契約違反にとどまらず、場合によっては刑事罰の対象となる可能性もあります。特に、詐欺罪(刑法第246条)に該当するケースが多く、意図的に複数のファクタリング会社から資金を引き出した場合、刑事責任を問われる可能性があります。
詐欺罪は、他人を欺いて財産的利益を得た場合に適用され、10年以下の懲役が科される可能性があります。また、特定のファクタリング会社を狙って意図的に多重譲渡を行った場合、組織的犯罪としてより重い処罰を受ける可能性もあります。
- 企業が取るべき対策
企業が多重譲渡のリスクを避けるためには、以下の点に注意する必要があります。
信頼できるファクタリング会社を選ぶ適切な審査を行い、透明性の高い契約を結ぶことが重要です。
社内の資金管理を徹底する売掛金の管理を適切に行い、誤って二重譲渡をしないようにすることが求められます。
ファクタリング会社との契約内容を確認する契約において、譲渡禁止特約がないか、また譲渡通知の義務があるかを確認し、法的リスクを回避する必要があります。
- まとめ
ファクタリングの多重譲渡は、契約違反にとどまらず、詐欺罪に該当する可能性のある重大な問題です。適切な資金管理と法的知識を持つことで、企業は不要なリスクを回避し、健全な資金調達を行うことができます。ファクタリングを活用する際は、適切な手続きと誠実な対応を心掛け、トラブルを未然に防ぐことが重要です。