香川県 水産養殖業 創業42年
ハマチの養殖を営んでいます。湾内に筏を組み、給餌船で配合飼料を撒く仕事を毎朝欠かしません。魚の成長は水温と餌の質に左右されるので、飼料は安さより鮮度と成分を優先します。ただ、飼料価格は年々上がり、出荷までの期間が長いぶん資金の負担が大きくなっています。
出荷先は主に市場の荷受会社です。檢量後に代金が確定し、口座に振り込まれるまでひと月ほど空きます。その間にも餌代や酸素ボンベの充填費、稚魚のロット代が立て続けに出ていき、手元資金が薄くなると養殖の回転が滞ります。そこで定期的にファクタリングを利用しています。売掛金の一部を現金化して、餌や薬浴剤の支払いに充てる仕組みです。
ファクタリング会社へは、水揚げ証明と取引実績の明細を送るだけで手続きが進みます。最初は手数料が気になっていましたが、餌を減らせば成長も遅れ、結果的に出荷単価が下がるので、必要なときに資金を回すほうが収支は安定します。
春先には水温の急変でハマチが食い渋る時期があり、成長が読めなくなります。薬浴やワクチン投与が増えればコストも膨らむうえ、出荷が遅れて資金サイクルが崩れやすいです。そんな局面でもファクタリングで現金を確保し、給餌量を落とさずに乗り切れています。
ただ、いつまでも頼り続けるつもりはありません。稚魚の歩留まりを上げるため、酸素濃度を自動管理できる送気装置を導入し、病気の発生を抑える取り組みを進めています。治療コストが下がれば、ファクタリングに出す割合も減らせるはずです。
販路も見直しています。活魚車で直接仲買人に届ける試みを始めたところ、現金決済の取引が徐々に増えました。全量をまかなえる規模ではないものの、即金があると飼料の一括仕入れができ、単価を抑えられるので効果を実感しています。
ファクタリングは資金繰りの安全弁として役立ちますが、常に費用が伴います。利用額が増えすぎないよう、出荷計画と在庫飼料の量を細かく管理し、使うときは用途をはっきり決めています。月ごとに資金表を見返し、手数料と飼料コストのバランスを確認する習慣もつきました。
海は毎年同じ顔を見せません。赤潮や低酸素水塊が来れば、一気に損失が膨らむ恐れもあります。それでも、魚を育てる仕事を続ける限り、先に投資する時期は避けられません。ファクタリングを必要なだけ使い、技術と販路の改善で徐々に依存度を下げる。それが今の現実的な目標です。
資金を手当てし、魚に十分な餌を与え、健康に育ちきったハマチを出荷する。その循環を途切れさせないよう、今日も筏の上で水面を見つめています。