群馬県 電気機械器具製造 創業31年
家電の中に組み込まれる基板やスイッチの組み立てを、下請けとして二十年ほど請け負ってきました。メインは電気機械器具製造ですが、社内だけでこなせる量ではなく、近隣に住む内職の方たちに分担してもらっています。部品を袋詰めしたり、配線を差し込んで接着したり。単純作業ですが、精度が必要で、検査に通らなければ納品できません。配達と回収は毎日、私の仕事です。
以前は受注が安定していて、内職の人たちにも週に三回は配れる仕事がありました。ところがコロナが落ち着いた頃から、半導体不足の影響で元請けの生産が不安定になりました。ニュースで自動車やテレビの減産が話題になったのと時期が重なり、「来月はちょっと減るかもしれません」と言われたのが始まりでした。
数か月で戻るかと思っていた受注数は、そのままじわじわと減り続け、今はピーク時の七割ほど。それでも現場は止められず、資材の仕入れ、配達のガソリン代、包装資材の購入と、経費は変わらず掛かります。
仕入れには掛けが使えますが、納品後の入金は一か月以上先。月末が近づくたびに支払いが重くのしかかり、去年から定期的にファクタリングを使うようになりました。月初に元請けから出る検収書をPDFで送れば、数日中に現金化できます。二回目以降は手続きもスムーズで、必要な資金を確保して内職の方への支払いも遅らせずに済みます。
ただ、安心できるのは一瞬だけです。ファクタリングで先にお金を受け取れば、その月の終わりには何も残りません。再来月に返ってくる残額を見越して、今月分をまた先に売る。その繰り返し。元請けに交渉しても「うちも厳しいですから」と言われるだけで、単価はこの五年ほとんど変わっていません。人件費と資材費が上がっても、間を抜く余地はどこにもありません。
回収に回る途中、農道の脇で信号待ちをしていると、助手席に積んだガソリンのレシートがふと目に入りました。一日三軒回るだけでも千円を超え、週末には五千円近くになることもあります。それでも仕事をお願いしている手前、ガソリン代が上がったから回収日を減らしますとは言えません。内職の人たちは皆、丁寧に作業してくれて、納期も守ってくれます。私の仕事は、その信頼の上に成り立っています。
毎月、資金のやりくりをしながら、あと何か月この状態が続いたら限界か――と計算してしまう自分がいます。受注が戻れば楽になる、それだけが希望の糸です。最近になって、少しずつ新しい家電製品の話も耳に入るようになり、元請けの営業担当も「来期からは生産増やす方針です」と言ってくれました。
今のままでは苦しい。でも、つなぐ手段があるだけでもまだ踏ん張れます。ファクタリングは決して理想的な資金調達ではありませんが、誰かに泣きつかず、条件も明確で、日々の仕事を守るための手段として定着しました。あとは少しでも受注が戻り、今より多くの仕事を回せるようになること。それを信じて、今日も部品の入った段ボールを軽バンに積み込みます。エンジンをかける音が、少しずつでも前に進んでいる証になりますように。
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