2社間ファクタリング利用者の多くが、一度で済まず継続してサービス利用する理由

2社間ファクタリングは、請求書をもとに資金化する手段のひとつとして中小事業者に広く利用されています。とくに資金繰りの即効性が重視される現場において、迅速な対応が可能なこの手法は、一時的な資金ショートの解消策として重宝されています。

ただし現実には、「一度だけの利用で済ませよう」と考えて申し込んだにもかかわらず、結果として毎月のように定期的に利用を続けている事業者も少なくありません。しかも、業績が右肩下がりの企業だけに限らず、売上自体は上昇傾向にあるのにファクタリングを止められない、というケースも多く存在します。

なぜ、2社間ファクタリングは一度きりで終わりにくいのでしょうか。そこには、単なる資金不足という表層的な問題を超えた、構造的な要因と事業者心理の積み重ねがあります。


1. 本来の入金サイクルと支払いサイクルの「ズレ」

まず、多くの企業が抱える根本的な問題として、「入金までのタイムラグ」が挙げられます。たとえば建設業やシステム開発業、製造業のように、業務完了から請求まで時間がかかり、さらに入金までが月単位で先になる業種では、資金繰りが常に先行投資的になります。

この入金のズレを、最初は手元資金や銀行借入で埋めようとしますが、キャッシュフローが一度でも崩れれば、次月以降も連鎖的にひずみが出てきます。そして、ファクタリングを使って資金を前倒しすると、翌月に本来入ってくるはずだった資金はすでに消えていることになります。そのため、次の月もまた「請求書を売って資金をつくる」必要が生じてしまうのです。


2. 利益があっても「現金が足りない」状態

「利益は出ているのに現金が足りない」という状況も、ファクタリングを継続させる要因のひとつです。とくに拡大路線をとっている企業や、設備投資・人材強化に力を入れている企業ほどこの傾向が強くなります。

たとえば、大きな案件を受注しても、それに対応するための外注費や仕入れ、人件費が先行します。請求できるのは納品完了後であり、入金はさらにその後です。内部留保が潤沢であれば対応できますが、ほとんどの中小企業はそういった余剰資金を抱えていません。したがって、ファクタリングを使って一時的に資金を引き出し、次の案件に投下する。このサイクルが“ビジネスモデルの一部”として定着してしまうのです。


3. 金融機関との関係が築けていない

金融機関との信頼関係ができていない、もしくはスコアが低い状態では、銀行融資に頼ることができません。短期の資金ニーズに対しては特に、スピード感を持って対応してもらえるケースが限られています。制度融資やプロパー融資の審査には時間がかかり、現場では「今日払わなければ人件費が出ない」という切迫感に追われる場面が少なくありません。

ファクタリングは、信用保証や担保なしで利用できることが最大の魅力です。そのため、銀行とのパイプが細い事業者ほど「いざというときにはファクタリングしかない」と判断し、繰り返し利用する傾向にあります。


4. 売掛債権の“使いやすさ”と心理的ハードルの低下

2社間ファクタリングでは、取引先に知られずに資金調達が可能です。これにより、事業者は「借金ではない」「信用を落とさない」「自分の資産を使っているだけだ」という認識で利用を正当化しやすくなります。

一度使うと仕組みに慣れ、心理的なハードルはどんどん低くなっていきます。担当者と関係性ができ、連絡もスムーズになると、申請の手間もなくスピーディに資金化できる。結果として、「資金が減ってきたらファクタリングで補う」という行動が常態化します。こうなると、毎月の資金繰りにファクタリング分が組み込まれた状態となり、抜け出すには大きな“意志”と“資金力”の両方が必要になります。