愛知県 清掃業 創業12年
清掃業を始めて、今年で12年目になります。小さな会社ですが、地域のビル管理会社やマンションオーナーの方々と少しずつ信頼関係を築いてきました。社員は5名、ほとんどが創業当初からの顔ぶれです。決して儲かる業種ではありませんが、定期清掃の契約が何件かあって、なんとか月々の支払いをこなしながら続けてこられたのは、安定した取引先に恵まれていたからです。
その中でも、月売上の4割を占める大口のビルメンテ会社との取引は、会社にとって生命線でした。古い付き合いで、毎月末にはきっちり振り込まれていたので、信用して疑うこともありませんでした。ですが、ある日突然、そこの社長から「申し訳ない、もう無理だ」と電話がかかってきたのです。
最初は意味がわかりませんでした。業績悪化は噂で聞いていましたが、まさか事業停止とは思ってもいませんでした。振り込み予定だった金額も未回収のまま。こちらとしては、その金額で給料や外注費、材料の仕入れを支払う段取りをしていたので、一気に支払いに穴があいてしまいました。
取引先の事業停止による連鎖倒産。そんな言葉が現実味を帯びてきたのは、翌週になってからです。取引銀行に事情を説明しましたが、うちの規模では追加融資は難しいとのこと。保証協会付きでも、審査には時間がかかる。資金が尽きる前に、何とか手を打たなければと焦っていた時、知人から「ファクタリングという手もある」と聞きました。
ファクタリングという言葉は知っていましたが、自分には縁がないと思っていました。借金ではないとはいえ、売掛金を前倒しで現金化するということに、どこか抵抗がありました。ただ、このままだと社員の給料が払えない。ためらっている場合ではないと感じ、ネットで業者を探して問い合わせました。
最初に連絡を取った会社では、「清掃業でこの金額規模だと、厳しいかもしれませんね」と言われました。確かに、数百万円単位で取引しているような業種と比べれば、うちの売掛は小さい部類です。ただ、2社目に連絡したところでは、「過去の入金実績がしっかりしていれば、検討可能です」と言われ、話を進めることになりました。
必要書類は、請求書、過去3ヶ月の入金明細、通帳のコピー、そして法人の登記簿謄本など。不安もありましたが、先方は説明も丁寧で、「支払い遅延がなければ、2~3回の利用で十分再建できると思いますよ」と言ってくれました。
今回は、他のビル管理会社への請求書を1件ファクタリングで買取してもらい、2日後には資金が振り込まれました。手数料はそれなりにかかりましたが、給与と支払いに間に合ったことで、会社が止まることは避けられました。
その後、別のルートで小規模ながら新しい定期契約を2件獲得しました。売上はまだ回復していませんが、外注を抑えつつ内部で仕事を回すことで、少しずつ再建の目処が立ってきました。ファクタリングも3ヶ月程度の利用で終えられそうな感触です。
もちろん、今後も元の取引規模に戻る保証はありませんし、経費の見直しは引き続き必要です。でも、あの時、ファクタリングという選択肢を取ったおかげで、事業を畳まずに済んだことは間違いありません。資金が回らないと、動けるはずの手も止まってしまいます。何も贅沢をしようと思ったわけではなく、ただ、最低限の事業継続のための手段として、今回は非常にありがたい制度でした。
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