佐賀県 自動車整備業 創業37年
町に活気がなくなってきたと感じたのは、10年ほど前からです。もともと自動車整備と中古車の販売を細々とやっていましたが、春になると一気に注文が入り、それなりに手応えを感じられる仕事でした。3月4月は高校を卒業した子どもたちが一斉にクルマを買いに来て、納車と整備が重なって息つく暇もありませんでした。
予算はだいたい50万円前後で、軽ばかりですが、台数が出れば悪くありません。そんな風に、春の繁忙期を見越して秋から仕入れを進め、年明けから整備に入るというのが毎年の流れになっていました。
けれど最近は、その春の注文そのものが来なくなっています。卒業しても進学で町を出る子が多く、地元に残る子がほとんどいないのです。若い家族も町を出てしまい、小学校は複式学級、中学校も統廃合の話が出ていると聞きました。自動車免許を取る子どもが減るというのは、それだけで死活問題です。
販売の方が落ち込むと、整備にもってきてくれる台数も当然減ります。
しかし、整備だけでなんとか帳尻を合わせるしかありませんが、それも限界があります。車検や点検は定期的に来ますが、急なトラブルの修理がないと手が空きます。スタッフに暇を出すのも気まずくて、結局みんなで洗車したり、工場の掃除をしたりする日が増えていきます。売上が落ちても支払いは変わりません。仕入れた中古車の代金、リフトや診断機のリース、保険料、そして人件費。経費を削ろうとしても、最低限の設備と人数は必要です。銀行に相談もしましたが、今のところ追加融資は難しいとの返答でした。保証協会の枠もいっぱいです。
そんなときに、知り合いの業者からファクタリングの話を聞きました。整備で出した請求書を早めに現金化できるというしくみで、最初は正直よくわかりませんでしたが、資金繰りが厳しい月に試しに利用してみました。売掛先は地元の法人で、支払いは毎月20日締めの翌月末払い。それをファクタリング会社が1割ほど引いて、すぐに現金化してくれるというものでした。最初は不安もありましたが、現金が動くというのはやはり安心感があります。自動車整備は売掛が当たり前なので、手元資金が乏しい月は精神的にも追い詰められます。今は、使う月と使わない月を分けて、帳簿を見ながら慎重に調整しています。できる限り使わずに済むように、納品タイミングや支払いサイトを交渉するようにもなりました。
理想を言えば、昔のように春が賑やかで、車を買いに来る子たちで駐車場がいっぱいになる景色をもう一度見たいです。でも、それはもう夢かもしれません。町の変化に逆らうのではなく、どうやって合わせていくか。今はそのことを毎日のように考えています。
ファクタリングは、決して楽な選択ではありません。手数料はかかりますし、使い続ければ利益が削られます。それでも、資金の流れを確保できる手段として、現実的な選択肢のひとつです。もうしばらくは、こうして持ちこたえていくしかありません。
お寄せいただいた体験談は、お客様が特定できないことを目的に、若干の修正をしております。改変に当たり文章の意図は変えておりませんので、ご理解ください。