廃れる一方の紳士服業界にあってファクタリングで維持しながら立て直しを図る。

岐阜県 アパレル卸業 創業51年

紳士服の卸業を営んでいます。主にスーツやジャケット、スラックスといった定番品を百貨店や専門店向けに納品してきました。父の代から続けている会社で、ピーク時は年に何万着という単位で動いていた時期もありました。ですが、もうそんな時代ではありません。
カジュアル化が進み、スーツを着る人そのものが減っています。働き方の変化も大きいですし、冠婚葬祭すら簡素になってきていて、「きちんとした服」が売れない。特にコロナ以降は、その傾向が一気に進みました。

それでも、得意先との関係を絶やさないように、細々とでも続けています。ですが問題は、納入価格が年々下がっていることです。百貨店も厳しいのはわかりますが、「この価格でお願いできないか」と言われるたび、もう限界だと感じます。素材や縫製の品質を落とすわけにはいかない。けれど、値上げ交渉が通らない。
一方で、生地や副資材の価格は上がっています。輸入生地に関しては為替の影響も大きく、同じクオリティのままで製造しているのに、粗利は年々薄くなっています。縫製工場への支払いも遅らせたくないので、資金繰りが追いつかないときには、毎月のようにファクタリングを利用しています。

最初に使ったのは去年でした。ちょうど大口の納品が続いていたのですが、支払サイトが長くて、その間の資金が回らなくなったんです。銀行融資では間に合わず、紹介してもらったファクタリング会社に売掛金を譲渡して、急場を凌ぎました。以来、取引先との信頼関係を壊さず、支払い遅延も防げる手段として、定期的に利用するようになりました。
もちろん、手数料は無視できません。それでも、現金が回らなくなって信用を落とすよりは、ずっといい。卸業は、信頼で続けている商売です。遅れたら、次の発注はもうこない。どこも代わりはいくらでもあるので、少しのつまずきが命取りになります。

今は、卸一本では立ち行かないと考え、ECサイトでの直販や、小ロットでの別注品対応など、新しい動きも始めています。既存の顧客とは別の市場を見ておかないと、潮目が変わったときに一気に沈む。まだ売上にはなっていませんが、SNSでの反応も徐々に出てきていて、希望は捨てていません。
ファクタリングから抜け出せる日がいつか来るのか、不安になる日もあります。ただ、今を乗り切れなければ、その「いつか」も訪れない。だから、割り切って使っています。資金繰りは決して甘くはありませんが、これも事業を維持するための一つの手段です。