困ったお客さん(最新版)

「またあの人からです…」

ファクタリングの受付業務をしていると、時々「こんな電話やめて欲しい。」という問い合わせが入ることがある。その中でも、ひときわ異彩を放っているお客さんの話を紹介します。

電話が鳴る。画面に表示された番号を見て、私は「ああ、またか」とため息をついた。案の定、受話器の向こうから聞こえてきたのは、慣れ親しんだテンションの高い男性の声。

「もしもし!〇〇株式会社の△△です! いや~、おたくでお金を用意してくれるって聞いたんですけど!」

「△△様、いつもお問い合わせありがとうございます。ですが、弊社は融資ではなく、ファクタリングのサービスを提供しております。売掛金がないと…」

「いや、あるんですよ! 俺の給料! これから確実に振り込まれるお金じゃないですか!」

「恐れ入りますが、給与はファクタリングの対象にはならないんです…」

「そこを何とか! 保証人も付けますから!」

まさかの展開に思わず吹き出しそうになった。保証人!? いや、そういう問題ではないのだ。おそらく本人は真剣なのだろうが、こちらとしては笑いをこらえるのに必死だった。

「大手企業にお勤めでいらっしゃるのでしたら、社内融資制度などをご活用されては?」

「いや~、ウチの会社、そういうの厳しくて…。それに、ちょっと趣味に使いたいんですよ。投資とか!」

「……」

趣味の投資にファクタリング!? もう何からツッコんでいいのか分からない。これまで、資金繰りに悩む企業の経営者や個人事業主の方々と接してきたが、こんなおバカな提案をしてくる人は初めてだった。

「申し訳ありませんが、弊社のサービスではお力になれません」

「そっかぁ~、残念です! いや~、でも諦めませんよ! 何か方法ないか、また相談します!」

そう言って、彼は意気揚々と電話を切った。

邪魔するために電話をしてきているのか?意図すら読めない状況に、もう笑うしかない。「また、絶対にかかってくるな」と思いながら何もできない。