受注単価が上がらず苦労の日が続くも、ファクタリングで持ちこたえる。

宮崎県 水道工事業 創業55年

岐阜県で水道工事をやっている者です。もともとは親父の代から続いている仕事で、自分が継いで十数年。従業員は数名ですが、地元の役所からの仕事も定期的に入り、そこそこ安定していました。それが、このところの物価高で様子が変わってきました。特に部材が足りない。仕入先からは「次はいつ入るか分からない」「価格がさらに上がるかもしれない」と、そんな連絡ばかり。水道工事って見えない部分が多いぶん、材料の質や規格を落とせるようなものでもないですし、手を抜いたところで後々トラブルになるのが目に見えています。だから、値段が上がろうと、仕入れざるを得ないんです。
困るのは、その分のコストを工事単価に反映できないことでした。公共工事でも民間でも、単価はなかなか動きません。仕入れが倍近くに跳ね上がっても、見積もりに反映しようとすれば、相手に逃げられてしまう。だからって現場を断れば、次の仕事に繋がらない。結局、自分たちでなんとか吸収するしかない状況が続いていました。そんな中で、月末の支払いが苦しくなったときがありました。材料費の立替え、職人への給料、外注費の支払い……仕事があるのに資金が足りない。皮肉なもので、受注が順調な月ほど資金繰りがきつくなっていくんです。

そのとき、知り合いの電気屋に「ファクタリングって知ってるか?」と聞かれました。話を聞いてみると、売掛金を現金化してくれるサービスで、借金じゃないらしい。最初は半信半疑でしたが、調べてみると意外とちゃんとした仕組みで、売掛先に連絡もいかないという点も安心材料でした。

いま請けてる民間工事の一部をファクタリングすることに決めました。契約書や発注書、それから入金予定の口座情報などを提出して、2~3日で手続きが進みました。手数料は正直安くはなかったですが、それでも仕入れ先への支払いを滞らせるわけにはいかない。背に腹は代えられませんでした。実際に資金が入金されたとき、なんとも言えない安心感がありました。「これでなんとか月を越せる」と思えたことは、精神的にも大きかったです。
ただ、これを繰り返すようになったらまずいという自覚もあります。仕入れ値が安定しない以上、根本的な解決にはなっていない。現場の数はあるのに、粗利が縮んでいく構造は変わらないんです。

今は、少しずつでも価格交渉の場を増やしています。発注先に「このままの単価では続けられません」と、はっきり伝えるようにもなりました。もちろん、それで逃げられることもありますが、長く付き合える相手なら、多少の理解を示してくれるものです。
ファクタリングを利用したのはこの一度きりです。でも、あのとき利用しなければ、職人への給料が遅れていたかもしれない。現場の信用を失うことを考えれば、必要な判断だったと今でも思っています。
もう少し単価が上がってくれれば、一気に状況は好転するはずです。けれど、物価だけが先に走っていく。焦る気持ちはありますが、地道にやるしかないと思っています。今回のことで、資金繰りの重要さと、事業の体力をつける必要性を改めて痛感しました。今後は備えを厚くして、再び資金に困ることのないように、足元を見直していこうと思っています。

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