厳しい経営状態でファクタリングで資金を繋ぎ続けている。

神奈川県 建設業 創業18年

請けているのは空調ダクトの工事。ゼネコンの下、サブコンから仕事をもらっている。職人を数人抱え、自分も現場に立つ。今はビルや病院、老人ホームなんかが主な現場だ。資材は基本的に前受金で仕入れている。ただ、それで足りるかといえば話は別だ。板金、吊り材、断熱材、ダンパー、消音器。あれもこれも値段が上がり続けていて、見積もり段階では想定しきれないコストが後から重くのしかかる。特にステンレス系の部材は価格も不安定だし、必要なときに在庫がないこともある。現場は待ってくれないから、予備を持っていないと動けない。倉庫代もかかるし、資金繰りには正直こたえる。

そんなわけで、数年前から定期的にファクタリングを使うようになった。売掛先に通知せずに済む2社間のやつだ。正直、最初は不安だった。ファクタリングのことをきちんと理解できていなかったし、こういうサービスに頼るのは自分の中で負けのような気がしていた。でも、現場が止まるのはもっと怖い。職人の手配、工程、下請けへの支払い、全部が連動しているから、どこかが止まれば他も一緒に崩れる。
いま請けている現場も規模が大きくて、前受金は出ているものの、終盤になってからの追加対応が多く、後から見積もり変更の話が来る。そうなると自腹で先に資材を入れるしかない。そんなときに売掛を一部現金化して凌いでいる。なるべく売掛の一部だけにとどめて、負担が膨らまないように気をつけているが、手数料はやはり軽くない。

それでも、動かせる資金があるという安心感は大きい。職人に支払いが遅れることもないし、資材の発注もタイミングを逃さずできる。現場が止まらずに済むという点では、十分意味のある支出だと思っている。昔は資材屋に無理を言って支払いを待ってもらったこともあったけれど、今はあまりそういうことも通用しなくなってきた。

本当は、こういうものに頼らない体制を作っていくべきなのは分かっている。だから、使う金額は毎回少しずつ減らしていくようにしている。現場ごとに細かく収支を見直して、利益の出し方を探っているところだ。値段を叩かれることも多いが、断れる仕事ばかりでもない。図面を見て、「これは苦しいな」と思っても、動かさなければ次の仕事につながらない。
建設業は、どこかで一度大きく抜けないと、延々と同じサイクルが続いてしまう気がする。今はまだその途中。いまは目の前の工程を一つずつ納めて、信用を積むしかない。ファクタリングはあくまで道具のひとつ。それがなければ回らないという状態にしないためにも、現場での精度と収益の出し方を少しずつ整えている。