十分な値上げがない中、厳しい状況をファクタリングでつなぐ

金属加工業 千葉県 創業32年

鉄の加工一筋でやってきました。切断、組み立て、穴あけ、溶接、塗装、それらを設計から施工まで一貫してやるのがうちの強みです。職人は皆、手を動かしながら考えるタイプで、口数は少ないですが腕は確かです。だから今までは、口で説明するより「これ見て」と現物を見せるのが一番早かった。それで通じるような仕事ばかりでした。

ただ、最近は思うようにいきません。材料費が上がって、しかもじわじわじゃなく、ドンと跳ね上がった感じです。建築関係の現場から急ぎで鉄骨加工を頼まれても、材料が確保できるか、納期に間に合うか、ひとつひとつが綱渡りになっています。納品後に「最近、高いね」と言われるたび、「値上げしてもこれ、上がった分は材料代でほとんど消えるんです」と言いたくなります。でもあまり口には出しません。

ファクタリングは2年ほど前から使っています。元請けからの入金が60日サイトのところも多くて、そのあいだ材料費の支払いが重なったり、急な機械の修理が入ったりすると、手元の資金では回らなくなります。最初はスポットで使っていたんですが、いつの間にか月に一度、定期的に利用するようになっていました。
手数料は当然あります。でも、貸し付けじゃないぶん気が楽です。取引先に知られずに済むよう配慮もしてくれるし、送金までが早い。今では月初に手形の受領日を確認して、売掛の一部を現金化しておく流れができています。資金繰りとしては安定しています。問題は、事業全体の見通しがまったく立たないことです。

人手が足りません。とにかく若い人が入ってこない。今いる職人も、ほとんどが60代。溶接の技術は見事なものですが、身体はもうしんどそうです。息子には継がせる気も、本人も継ぐつもりもないようです。そうなると、今いる人たちがやめたらもう終わりなのか、と考えるようになりました。
若手を雇いたい気持ちはあります。ただ、材料費の高騰に伴って、加工賃の値上げを交渉しても、「それは材料分として」と言われるのが関の山です。結果的に利益は増えず、賃金も上げられません。募集をかけても「この給料でこの仕事?」という反応ばかりで、見学に来た若い人に「これ、全部手作業なんですか」と驚かれると、逆にこちらが驚いてしまいます。
自分でも、どこまでこの仕事を続けるつもりなのか、わからなくなっています。今の売上で人件費も材料費もまかない、さらに将来の投資をするというのは現実的ではありません。かといって、やめるとなると設備の処分や借入の清算、従業員の再就職など、考えるだけで気が重くなります。どうせやるなら一日でも長く、と思っていましたが、最近は「どう終わらせるか」を考える時間のほうが増えています。

ファクタリングは、その場その場の解決には役立っています。でも、根本の問題は何も解決していません。それでも毎月、給料をきちんと払い、材料を仕入れ、納期を守る。それができているうちは、まだ踏ん張れているんだと自分に言い聞かせています。
誰かに相談できるような内容でもなく、かといって何かを変える余力もなく、毎月決まったように手形を売却して、現金をつくって、請求書を整理していく。今はその繰り返しです。

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