創業間近で、まだ申告してない場合はファクタリングはできるのか?

創業間もない経営者の方から、「まだ申告していないがファクタリングは利用できるのか?」というご相談を受けることが増えてきました。法人設立や個人事業開始直後には、設備投資や人件費、仕入れなどの初期コストが重なり、手元資金が一時的に圧迫されるケースが少なくありません。一方で、売上が立ち始めているにもかかわらず、入金は1~2ヶ月先というケースもあり、資金繰りの谷間が発生しやすいタイミングでもあります。

このような状況で、税務申告が完了していない事業者がファクタリングを利用できるのかという問題について、ファクタリング業者の視点から解説します。


1. 申告がなくてもファクタリングの利用は可能か?

結論から申し上げますと、「条件を満たせば可能」です。ファクタリングは本来、売掛債権の買い取りによって資金を調達する仕組みであり、売掛債権そのものの信用性が審査の中心になります。そのため、「税務申告が完了しているかどうか」は、確かに審査項目の一つではありますが、絶対条件ではありません。

とくに創業直後の事業者にとって、1期目の決算や確定申告はそもそも発生しておらず、「未申告=不誠実」とは一概に判断できないという背景もあります。つまり、創業間近であっても、他の条件が揃っていればファクタリングの利用は十分に可能です。


2. 審査で求められるその他の要素

申告がない場合、ファクタリング業者は以下のような書類や実績で補完的な判断を行います。

  • 請求書や契約書、発注書などのエビデンス 売掛債権が実在しており、入金が見込まれるという事実を証明できる書類が重視されます。取引先との契約内容、請求の金額、入金のスケジュールなどが明確であるほど審査に通りやすくなります。
  • 直近の入出金履歴 創業直後であっても、すでに入金実績がある場合は、それが信用力の補完材料になります。銀行口座の入出金明細や、取引先からの振込記録などが有効です。
  • 取引先の信用力 二者間ファクタリングであっても、最終的に支払うのは取引先企業であるため、その企業の信用状態(上場企業、大手法人、官公庁など)によって審査結果に大きく影響します。
  • 事業計画書や資金繰り表 まだ決算書が存在しない場合、将来の収支見通しを示すことができる資料があると、業者側も「健全な資金需要」であることを理解しやすくなります。
  • 代表者個人の信用情報 代表者が過去に自己破産や滞納をしていないかなど、信用情報の照会も行われる場合があります。個人保証を求めるわけではありませんが、事業主の信用が事業の信頼度と直結する場面は少なくありません。

3. 実際の利用事例

たとえば、創業1ヶ月でWEB制作事業を始めた個人事業主の方が、すでに大手広告代理店との契約で売掛金100万円を有しており、納品完了済み・請求済みで入金は翌月末という状況がありました。設備費用と人件費が重なり、資金が枯渇しかけていたタイミングで相談がありましたが、以下の書類を提出いただき、無事に買取となりました。

  • 請求書(PDF)
  • 発注書(メール形式)
  • 納品完了のメール記録
  • 取引先が上場企業であることを示す情報
  • 直近の通帳コピー(売上の振込実績あり)

このように、しっかりとしたエビデンスが揃っていれば、未申告でも柔軟な対応が可能です。


4. 注意点と今後の準備

ただし、「創業間近で未申告」という状況をずっと続けることは、長期的に見て信用の蓄積にはつながりません。ファクタリングを継続的に活用したい場合は、1期目の申告を確実に行い、帳簿を正確につけることが重要です。

また、架空債権の提出や、入金見込みのない取引を売掛として申請するなど、不正な申込みは厳格に排除されます。未申告であっても、事業の実態が透明で、法令を遵守していることを前提に、ファクタリングは成立する仕組みだと考えてください。


まとめ

創業間近で申告がまだ済んでいない場合でも、ファクタリングの利用は「可能」です。ただし、それを補完するだけの資料や実績が求められます。きちんとした売掛金があり、事業が実在していると証明できるのであれば、ファクタリングは創業初期の資金繰りを支える強力な手段となり得ます。

ファクタリングは、あくまで「現金化の手段」であり、「信用創造の手段」ではありません。そのため、必要な情報を整理し、誠実な姿勢で臨むことが、ファクタリング審査においても、長期的な事業運営においても重要です。