岩手県 土木業 創業23年
公共工事は年が明けた頃からしばらく動きが鈍くなります。予算の切り替えを待つあいだ、役所からの発注も途絶えるため、手持ちの案件がなければ完全に手が空いてしまうということもあります。うちのような小さな下請け業者にとって、この時期は毎年のように悩みの種です。運転資金というほど大きなものは必要なくても、日々の生活費や従業員の給料、倉庫の賃料など細かな支出は重なっていきます。
その年もやはり春先の受注がうまくいかず、数週間ほど現場が止まりました。現金残高が底をつくわけではありませんでしたが、次の現場の入金まで2か月以上空くとなると、精神的にも落ち着かないものがあります。銀行からの融資は以前試したことがあるのですが、小規模な個人事業にとっては手続きも煩雑で時間もかかり、結局断念した経験がありました。
そんなときに知ったのがファクタリングでした。もともと一度完成した工事の代金は、役所から数か月後に必ず支払われます。信用力は十分にあるはずですし、その売掛金を元に資金を得られるのであれば、今の状況に合っているように思いました。
最初は少し不安もありました。契約の仕組みも、手数料も、仕訳の方法も初めて尽くしです。ですが、問い合わせた業者が説明も丁寧で、必要な書類の確認や、過去の工事実績などもスムーズにやり取りできました。数日後には無事に資金が手元に入り、固定費の支払いにも間に合いました。
一度経験してしまえば、次からの利用はそれほど抵抗もなくなります。ただ、それに甘えてしまうと本末転倒です。現場の受注が安定しはじめた6月以降は、毎月の資金繰りを見直して、ファクタリングの依存度を徐々に下げていきました。
この年は、梅雨明けから水路の改修案件が立て続けに入り、夏場はかなりの忙しさになりました。売掛金をもとに資金を回すことは続けていましたが、以前より売却額を減らし、手元に残る分を少しずつ増やしていくことができました。
秋の終わりには、ようやくファクタリングを使わなくても事業を回せる見込みが立ちました。繁忙期と閑散期がはっきりしている業種ですから、完全に切り離すのは難しいかもしれませんが、選択肢として使えるようになったことで、精神的にはかなり楽になったと思います。
売上が安定していない時期に、数ヶ月先の売掛金をどうにかできる手段があるというのは、大きな安心材料です。ただ、どこにどれだけ頼るかは常に考えながら運営していくべきだとも感じました。
同業の仲間にも、近頃はファクタリングの話題が出ることがあります。最初は抵抗があるという人が多いのですが、自分のように「一度使ってみたら助かった」という話をすると、少し見方が変わるようです。工事そのものだけではなく、こうしたお金の管理もまた、商売のうちなのだと改めて実感しています。
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