岩手県 土木業 創業25年
道路工事の下請けをしています。うちは舗装班で、アスファルトの打設とローラーによる締固め、いわゆる仕上げの工程を担当しています。現場は常に忙しく、夏は灼熱、冬は凍えるような寒さのなかでの作業です。仕事そのものは切れ目なくありますが、最近はどの現場でも採算が厳しくなっています。
理由は資材費の高騰だけではありません。アスファルト合材やコンクリート、砕石などの仕入れは、ほぼ元請けが“指定している”業者からに限られているという実態があります。書面での取り決めはないのですが、現場ごとに名指しされる供給先から仕入れないと、次の現場を回してもらえないという噂がまことしやかに流れています。実際、うちも一度だけ、少しでも安い業者から仕入れようと動いたことがありましたが、その次から急に声がかからなくなりました。
それだけで、仕入れ単価は市場価格よりも1〜2割高くなってします。
仕方なく従っていますが、材料費だけでかなりの割合を占めてしまいます。職人たちの手間賃も必要ですし、重機の燃料代もばかになりません。手元に現金が残る頃には、すでに次の現場が始まっており、また材料費の先払いが発生するのです。
そんな状態が続いていた頃、ファクタリングという仕組みを知りました。最初は「資金繰りに困っている会社が利用するものだ」と思い込んでいましたが、付き合いのある同業の社長から「うちは定期的に使っているよ」と聞いて、興味を持ちました。うちは借入枠もそれなりにありますし、赤字が続いているわけでもありません。ただ、請求から入金までの1〜2ヶ月、その“タイムラグ”のせいで常に資金繰りに神経を使っているだけなのです。売掛債権を売却して、すぐに現金化できるのであれば、毎月の資金回転が良くなります。それなら一度試してみようと、『中小企業ビジネスサポーターズ』さんを通じてファクタリングを利用することにしました。まずは少額、300万円ほどを2社間ファクタリングで進めました。債権は実際に発行した元請け宛の請求書で、すでに入金確認もできていたため、審査は比較的スムーズに通りました。
手数料は正直言って安くはありません。しかし、支払いサイトの関係で融資を受けるよりも早く現金化でき、信用情報にも影響しないという点は魅力的でした。さらに、毎回同じ取引先で回すようになってからは、担当者の理解も進み、事務作業も一部自動化されて、資金化までのスピードが上がってきました。
いまでは月に一度、入金日を見越して事前にファクタリングを組むことが習慣になっています。ファクタリングがなければ会社が立ち行かない、というわけではありません。ただ、現金が足りなくなれば、職人の手間賃を遅らせるわけにもいきませんし、元請けが指定してくる高額な資材を現金で仕入れる必要もあります。どれも絶対に遅らせられない支出です。
もちろん、ファクタリングにもリスクがないわけではありません。もし元請けの入金が遅れれば、自分たちの信用にも影響しますし、毎回手数料がかかることを考えると、年間のコストとしては無視できない金額になります。それでも、「資金が足りない」という不安を抱えずに済むことの方が大きな安心材料になっています。仕事を止めないために利用している、というのが本音です。
周囲にも、同じような立場の業者は少なくありません。みな言葉には出しませんが、似たようなやりくりで現場を回しているのだと思います。表に出ない圧力や、明文化されないルールのなかで、今日も現場は進んでいます。
今後、物価が少しでも落ち着いてくれればと願っていますが、正直あまり期待はしていません。だからこそ、どう資金を回すか、どう会社を守っていくかを考え続けるしかないのです。ファクタリングは、その選択肢のひとつとして、いまではうちの経営に欠かせない仕組みになっています。
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