リースバックとファクタリングの相性と効果的な利用方法

企業の資金調達手段にはさまざまな方法がありますが、その中でも「リースバック」と「ファクタリング」は、事業資金の確保を柔軟に行うために有効な手段の一つです。どちらも保有資産や売掛金を活用して資金を調達する手法ですが、それぞれの特徴を活かしながら組み合わせて利用することで、キャッシュフローの安定化や財務の健全化を図ることが可能になります。本コラムでは、リースバックとファクタリングの相性や効果的な活用方法について詳しく解説いたします。
リースバックとファクタリングの基本的な仕組み

まずは、それぞれの仕組みを簡単に整理しておきます。

リースバックとは
リースバックとは、企業が保有する不動産や車両、設備などを一度売却し、その後、売却先からリース契約を通じて継続して利用する仕組みです。例えば、会社が所有しているオフィスや工場、営業車両を売却し、その後リース料を支払うことで引き続き使用できるという形になります。これにより、企業は資産を手放さずに資金を調達することができます。

ファクタリングとは
ファクタリングは、企業が持つ売掛金を金融機関やファクタリング業者に売却し、早期に現金化する資金調達方法です。特に、売掛金の入金サイクルが長い業種では、資金繰りの改善に役立ちます。銀行融資とは異なり、審査のスピードが速く、担保や保証人が不要である点が大きなメリットです。
リースバックとファクタリングの相性が良い理由

リースバックとファクタリングは、それぞれ異なる資産(不動産・設備と売掛金)を活用するため、同時に活用しても相互に影響を与えにくい点が特徴です。以下の理由から、この二つの手法は相性が良いといえます。

異なる資産を活用できる
リースバックは主に不動産や設備、車両といった固定資産を資金化する手法であり、ファクタリングは売掛金という流動資産を資金化する手法です。そのため、両方を組み合わせることで、固定資産と流動資産の両面から資金を確保することが可能になります。

資金調達のスピードを高めることができる
リースバックは一般的に契約から資金化まで数週間を要することがありますが、ファクタリングは最短で即日資金化が可能な場合もあります。ファクタリングを先行させることで、短期の資金ニーズを満たしつつ、リースバックによる資金調達を並行して進めることで、より安定した資金繰りを実現できます。

財務状況を健全化できる
リースバックを活用すると、資産を売却することでバランスシート上の固定資産を減らし、同時にキャッシュを増加させることができます。また、ファクタリングを活用すれば、売掛金を早期に資金化できるため、資金繰りが改善し、財務体質の強化につながります。

資金用途に応じた柔軟な活用が可能
リースバックでまとまった資金を確保し、設備投資や事業拡大の資金として活用しながら、ファクタリングで日々の運転資金を確保することで、経営の安定化を図ることができます。

リースバックとファクタリングを組み合わせた活用事例

ここで、具体的な活用例を紹介いたします。

ケース1:運送業のキャッシュフロー改善
ある運送会社では、営業用トラックのリースバックを活用して資金を調達し、新たな物流拠点の開設に充てました。しかし、新拠点の開設後、荷主からの売掛金の回収が遅れるケースが増え、一時的に運転資金が不足しました。そこで、売掛金をファクタリングすることで、短期間で資金を確保し、ドライバーの給与や燃料費の支払いに充てることができました。

ケース2:建設業の資材調達
建設会社では、所有していた重機をリースバックし、まとまった資金を得ることで、新規の大型案件に対応するための初期投資を行いました。しかし、建材費の高騰により追加の仕入れ資金が必要となり、短期的な資金繰りが厳しくなりました。そこで、工事代金の売掛金をファクタリングすることで、必要な資材の仕入れをスムーズに行うことができました。
リースバックとファクタリングを組み合わせる際の注意点

リース料の負担を考慮する
リースバックを利用すると、売却後にリース料を支払う必要があります。そのため、月々の支払いが経営に負担をかけないよう、リース料と収益のバランスをしっかりと考慮することが重要です。

ファクタリングの手数料を確認する
ファクタリングは売掛金の金額や取引条件によって手数料が異なります。特に手数料が高すぎると、得られる資金が減少し、期待した効果が得られない可能性がありますので、事前に複数の業者を比較し、適切な条件で契約することが求められます。

資金調達の計画を立てる
リースバックとファクタリングを組み合わせることで、短期・中期の資金繰りをスムーズにすることが可能ですが、無計画に資金を使ってしまうと、将来的な支払い負担が大きくなる可能性があります。資金の用途を明確にし、計画的に活用することが成功の鍵となります。

まとめ

リースバックとファクタリングは、それぞれ異なる資産を活用した資金調達方法ですが、組み合わせて利用することで、資金繰りの安定化や財務状況の改善を図ることができます。固定資産をリースバックで資金化しつつ、ファクタリングを活用して売掛金を早期に現金化することで、短期・中期の資金ニーズに柔軟に対応することが可能となります。

ただし、リース料やファクタリング手数料の負担を考慮し、適切な計画を立てながら活用することが重要です。資金調達手段を賢く組み合わせ、健全な経営を維持していくことで、企業の持続的な成長につなげていくことができるでしょう。