ファクタリング脱却まで先は長いが、今は少しづつ額を減らしていくだけ。

岡山県 水道設備工事 創業27年

新築住宅の水道設備を専門に請け負う私たちは、ハウスメーカーからの図面が届くたびに胸の内で軽くため息をつきます。材料費も人件費も高騰しているのに、提示される下請け単価はほとんど据え置きです。受けないと仕事が切れてしまう恐怖があるので、値段交渉は形だけにとどまり、最終的にはメーカーの指示通りの見積書を提出するしかありません。
工事が完了して請求書を送っても、入金は二か月先という契約が慣例になっていて、毎月の職人への手間払いと資材の現金仕入れを考えると、運転資金の穴はすぐに広がります。
そこでファクタリング会社に売掛金を譲渡する流れが常態化しました。最初の頃は工事一本分をまるごと買い取ってもらい、手数料も割高でしたが、資金が底を突く恐怖に比べたら背に腹は代えられません。ところがファクタリングの利用額が膨らむほど利益率は削られ、現場を終えても手元に残る金額がわずかです。これではいつまで経っても資金繰りに追われるだけという状況に気付き、少しずつですが方針を改めることにしました。
まず、終了検査までの段取りを見直し、配管の自主検査を複数回に分けて実施する仕組みを導入しました。手戻りが減ることで材料の追加購入が抑えられ、職人の残業も減ります。さらに、メーカーの標準仕様から外れない範囲で、水栓金具を自社仕入れ品に切り替えました。海外製の大量仕入れではなく、地元の金物問屋と直接契約し、中間マージンを圧縮する狙いです。小さな改善ばかりですが、結果として一件当たりの粗利がわずかに厚くなり、ファクタリングに出す売掛金は工事代金の半分程度に抑えられるようになりました。

それでも目標はファクタリングからの完全脱却です。突発的な悪天候で工期が延びたり、メーカーの仕様変更が入り込むと、また資金が詰まってしまうリスクがあります。そこで大きく儲けるための一手として、同じ職人班を週末にリノベーション物件へ派遣し、配管の更新工事を直接請ける取り組みを始めました。口コミで依頼が増え、材料をまとめて仕入れられる規模になれば、単価を下げずに利益を確保できます。もちろん本業に影響を出さないよう日程調整が不可欠ですが、職人たちも技術を試せる現場が増えると意欲が上がります。
最近、取引銀行の担当者が月次試算表を見ながら新たな運転資金枠を提案してくれました。ファクタリングで資金を回すより金利負担が軽く、保証協会付きであれば審査も進めやすいと説明を受けました。過去に何度も断られた経験があるので半信半疑でしたが、直近の原価改善やリノベーションの実績を丁寧に示すと、担当者の表情が少し明るく変わります。
決算期までに試験的に小口融資を組めれば、ファクタリングの利用額をさらに減らし、手数料だけで毎月消えていく利益を守れます。もちろん融資とて返済が伴いますが、少なくとも建設的な資金循環が描ける手応えがあります。

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