企業や個人事業主が資金繰りの選択肢として検討することが増えてきたファクタリング。その普及とともに、ネット上や広告媒体で「手数料◯%〜」という表記を目にする機会も多くなりました。しかし、実際にファクタリングを利用した人の声を聞くと、「思っていたより高かった」「結局、実質10%を超えていた」といった話も少なくありません。
このギャップはどこから生まれるのか。なぜ公表されている「手数料」と、実際に支払う「費用」に違いが出るのか。本稿では、2社間ファクタリングを中心に、手数料の構造と実態について詳しく解説します。
そもそも「手数料◯%〜」の「〜」とは何か?
ファクタリング会社のホームページにはよく「手数料は2%〜」や「1.5%〜10%」といった記載があります。しかしこの「〜」という表記がすでにクセモノです。金融商品の世界で「〜」とあれば、それは最低ラインであり、実際の適用率とは大きく乖離していることがほとんどです。
たとえば、売掛先が上場企業で、売掛債権の金額も数千万円単位、利用者自身の信用状態にも問題がない場合であれば、確かに2%〜5%といった低水準の手数料が適用される可能性もあります。しかし現実として、ファクタリングを必要とする場面は「資金が急ぎで足りない」「今月支払いが厳しい」といった状態であることが多く、信用リスクは相応に高く見積もられます。そうなると、手数料は8%〜15%、場合によっては20%を超えるケースも出てきます。
さらに、広告上の「手数料」はあくまで「ファクタリング手数料」であり、それ以外の諸費用が別にかかるケースも少なくありません。
実際にかかる費用の内訳
ファクタリングにおいて実際に請求される金額には、以下のような要素が加わることがあります。
事務手数料(初期費用)
契約書の作成費や審査費、売掛先への信用調査などにかかる費用として、一律で1万〜5万円程度が別途請求されることがあります。
振込手数料
買い取り額の入金時に、振込手数料が差し引かれる場合があります。地味ですが数百円〜数千円の出費となります。
印紙代
契約書が紙媒体で交わされる場合、契約金額に応じて印紙税がかかります。これも利用者負担になることが一般的です。
債権譲渡登記費用(3社間ファクタリングの場合)
登記が必要な場合には登録免許税や司法書士報酬が発生します。これも加算されると、数万円単位の負担になります。
最低手数料の設定
売掛金の金額に関係なく、最低5万円の手数料などが定められていることもあり、小口債権のファクタリングでは割高になる傾向があります。
このように、単に「〇%の手数料」という一言では表現しきれない、さまざまな費用要素が存在しており、それらをすべて合算してはじめて「実質の手数料」が見えてきます。
2社間ファクタリング特有のリスク加味
2社間ファクタリングでは、売掛先には債権譲渡の通知を行わず、利用者(売掛債権者)からの入金を前提に資金を提供します。この場合、ファクタリング会社からすると「売掛先が支払いをしない」「利用者が資金を使い込んでしまう」リスクが付きまといます。
そのため、3社間に比べて2社間の手数料が高くなるのは構造的に当然であり、広告で2%〜と記載されていたとしても、実際には10%前後が相場と言われることが多いです。
また、期日を過ぎての支払い遅延が発生した場合には、遅延損害金や延長手数料が発生することもあり、これらが積み重なると、実質の年利換算で20〜30%に達するケースもあります。
一括払いか分割払いかでも違う
ファクタリングによっては、買い取り債権の金額から手数料を一括で差し引くパターン(例:100万円の債権を90万円で買い取り、10万円が手数料)と、複数回に分割して手数料を徴収するパターン(毎月数万円ずつ天引き)があります。
特に後者のように分割で手数料を取る形式の場合、表面上の月次手数料は小さく見えても、実質年率換算では非常に高くなることがあります。これは消費者金融と同様に「分割払いの錯覚」を利用した手法であり、見た目の負担感が軽減されているだけです。
実質手数料は自分で試算するしかない
ファクタリングを検討する際、重要なのは「総額いくらが手元に入って」「回収金額はいくらで」「その差額がいくらか」という実際の数字を冷静に見ることです。
たとえば、120万円の売掛金をファクタリングし、実際に手元に入ったのが105万円だったとします。この場合の手数料は15万円=12.5%ということになります。ここに契約費用や振込手数料などが上乗せされていれば、実質的な手数料はさらに高くなる可能性もあります。
まとめ:手数料の実態は「総コスト」で判断を
ファクタリングは、資金繰りに困ったときの選択肢として有効である一方で、「思ったより高かった」「資金繰りが逆に厳しくなった」と後悔する声もあります。これは、広告に記載されている「手数料◯%〜」の情報だけを鵜呑みにし、実際にかかる費用を事前に把握していないことが原因です。
大切なのは、「実際にいくら支払うのか」「それがどれだけの利率に相当するのか」を自身で試算し、冷静に比較検討することです。複数社に見積もりを依頼し、総コストが明示された提案を比較することで、過度な費用負担を避けることができます。
ファクタリングは、資金繰りを安定させるための道具にすぎません。道具を正しく使うためには、まずその仕組みと実態を正しく理解することから始まります。