ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる手段として、多くの企業が資金繰りの改善に活用しています。特に銀行融資を受けるのが難しい中小企業にとっては、スピーディーに資金調達ができる点が魅力です。しかし、利用する際には注意すべき点も多く、場合によっては思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。本稿では、ファクタリングで起こりがちなトラブルとその対策について解説します。
1. 手数料が想定以上に高い
ファクタリングを利用する際、多くの企業が気にするのが手数料の負担です。特に2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社が売掛先から直接回収できないため、そのリスクを反映した手数料が10~30%と高額になることがあります。契約前に「数%程度」と説明されていたにもかかわらず、実際に契約を結ぶ段階で想定以上の手数料を請求されるケースも少なくありません。
対策:
- 契約前に手数料の内訳を明確に確認し、複数の業者と比較する。
- 追加費用が発生しないか、契約書の細かい条項までしっかりとチェックする。
- 可能であれば、低コストで利用できる別の資金調達手段も検討する。
2. 売掛先にファクタリングの利用が知られてしまう
2社間ファクタリングは売掛先に知られずに資金化できる点がメリットとされていますが、一部のファクタリング会社では契約後に売掛先に通知を行ってしまうケースがあります。売掛先に「資金繰りが厳しいのでは」と疑念を持たれると、取引関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
対策:
- 「売掛先には通知しない」という契約内容を事前に確認する。
- 信頼できるファクタリング会社を選び、利用者の口コミや評判をチェックする。
- 取引先との関係を考慮し、慎重に利用する。
3. 売掛先が倒産し、資金を返還しなければならなくなる
通常、ファクタリングは売掛債権を売却する形になるため、売掛先が倒産しても利用者側に支払い義務は発生しません。しかし、一部の契約では「償還請求権付き(リコース)」となっており、売掛先が支払い不能になった場合、ファクタリング会社から利用者に返金請求がくるケースがあります。
対策:
- 契約前に「償還請求権なし(ノンリコース)」であることを確認する。
- 売掛先の信用状況を把握し、不安がある場合はファクタリングを利用しない。
- 売掛金の一部のみをファクタリングに出し、リスクを分散する。
4. 契約内容の不明瞭さによるトラブル
ファクタリング会社によっては、契約内容が複雑で細かい部分の説明を省略しがちです。そのため、契約後に「こんな条件があるとは知らなかった」とトラブルに発展することがあります。例えば、「解約には違約金が発生する」「支払サイトが変更された場合に追加費用がかかる」など、後から思わぬ負担が生じることもあります。
対策:
- 契約書を隅々まで確認し、不明点があれば必ず質問する。
- 事前にファクタリングの仕組みを学び、契約内容を理解した上で利用する。
- 必要に応じて、弁護士や会計士など専門家に契約書の内容をチェックしてもらう。
5. 悪質な業者によるトラブル
近年、違法な「偽装ファクタリング」や、高額な利息を要求する「ヤミ金融型ファクタリング」が問題になっています。特に、「審査なし」「誰でも即日利用可能」といった広告を掲げる業者には注意が必要です。こうした業者を利用すると、違法な利息を取られたり、売掛金の回収をめぐってトラブルに巻き込まれる可能性があります。
対策:
- 金融庁や業界団体に登録されている正規のファクタリング会社を利用する。
- 「審査なし」「即日100%資金化」などの誇張表現を使う業者は避ける。
- 初回取引は少額から行い、業者の対応を見極める。
まとめ
ファクタリングは資金繰りの改善に役立つ便利な手段ですが、適切に利用しないとさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があります。特に、手数料の高さや契約内容の不明瞭さ、売掛先への通知、償還請求権の有無などには十分に注意が必要です。また、悪質な業者の存在も無視できません。
ファクタリングを利用する際には、短期的な資金繰りだけでなく、長期的な経営の安定も考慮し、慎重に判断することが大切です。しっかりと情報収集を行い、信頼できる業者を選ぶことで、安全かつ有効に活用できるでしょう。