ファクタリングで買い取れる債権と買い取れない債権

ファクタリングは、企業が持つ売掛金(売上債権)を早期に資金化する手段として広く利用されています。しかし、すべての債権がファクタリングの対象となるわけではありません。ファクタリング会社には審査基準があり、買い取れる債権と買い取れない債権が明確に分かれています。ファクタリングの利用を検討する際には、自社が保有する売掛金が買い取り対象になるかどうかを理解しておくことが重要です。

ファクタリングで買い取れる債権

ファクタリングで買い取れるのは、基本的に「売掛金」として適切な条件を満たした債権です。具体的には、以下のような要件を備えている必要があります。

① 商取引に基づく売掛債権
ファクタリングで買い取られる債権は、基本的に「企業間の商取引によって発生した売掛債権」です。商品やサービスの提供後に発生し、一定の支払期日までに取引先から支払われるべき売掛金であることが条件となります。例えば、以下のような業種で発生する売掛金が該当します。

  • 建設業の請負代金
  • 製造業の製品納入代金
  • IT企業のシステム開発費用
  • 医療機関の診療報酬
  • 運送業の輸送費

② 支払い期日が明確な売掛債権
ファクタリングは、売掛金を期日前に資金化する手段のため、支払い期日が明確であることが重要です。通常、支払いサイト(30日や60日など)が設定されている債権が対象となります。

③ 取引先の信用力がある売掛債権
ファクタリング会社は、売掛先(取引先)の信用力を重視します。なぜなら、ファクタリングは売掛金を早期に現金化する仕組みであり、売掛先が期日通りに支払いを行うことが前提だからです。一般的に、以下のような取引先の売掛債権は評価が高く、買い取りがスムーズに進みます。

  • 上場企業や大手企業
  • 官公庁・自治体
  • 信用力の高い中堅企業

④ 未回収リスクが低い売掛債権
売掛先が支払いを行わなかった場合、ファクタリング会社のリスクとなるため、「未回収リスクが低い債権」であることも求められます。すでに支払遅延が発生している売掛金や、売掛先が経営不振の状態にある場合は、買い取りが難しくなります。

ファクタリングで買い取れない債権

一方で、ファクタリングの対象外となる債権も存在します。以下のような債権は、一般的にファクタリング会社が買い取りを拒否する傾向があります。

① 個人を相手にした売掛債権
ファクタリングは「企業間取引」に基づく売掛金を対象としているため、個人を相手にした債権(個人向けローンや個人取引による売掛金など)は対象外となります。たとえば、以下のような債権は買い取りの対象になりません。

  • 一般消費者向けの販売代金
  • 個人の診療費や学費

② すでに支払遅延が発生している債権
売掛金がすでに支払期限を過ぎている場合、ファクタリング会社は未回収リスクが高いと判断し、買い取りを拒否することがほとんどです。ファクタリングは売掛金の早期資金化を目的としたサービスであり、債権回収の手段ではないため、回収が困難な債権は対象になりません。

③ 売掛先が経営難に陥っている債権
売掛先が倒産の危機にある場合や、すでに法的手続き(民事再生や破産手続きなど)に入っている場合、その売掛金の回収は非常に難しくなります。ファクタリング会社は取引先の信用調査を行い、リスクが高いと判断された場合は買い取りを行わない可能性が高いです。

④ 返品や契約解除のリスクがある債権
売掛金の中には、取引内容によっては「返品」や「契約解除」によって売上が取り消されるリスクがあるものもあります。たとえば、試験運用期間を経て正式契約となるサービスや、納品後に品質不良が判明して返品対応となる商品取引などは、買い取りを拒否されるケースが多くなります。

⑤ 売掛金ではない債権(手形や融資)
ファクタリングの対象となるのは、あくまで売掛金であり、銀行融資や社債、未払いの給与債権などは買い取り対象外となります。また、小切手や手形を担保にした資金調達は、手形割引などの別の金融商品を利用することになります。

ファクタリングを利用する際のポイント

ファクタリングを利用する際には、まず自社の売掛債権が買い取り対象になるかを確認することが大切です。特に以下の点に注意しましょう。

  • 売掛先の信用力を確認する:取引先の財務状況や支払い実績を把握し、信用リスクを管理することが重要です。
  • 売掛金の条件を整理する:売掛金の発生日、支払期日、取引内容などを明確にし、適切な書類を準備することでスムーズな審査が期待できます。
  • 適切なファクタリング会社を選ぶ:ファクタリング会社によって審査基準が異なるため、信頼できる業者を選び、手数料や契約条件をよく確認しましょう。

ファクタリングは、資金繰りの改善に役立つ有効な手段ですが、すべての債権が買い取られるわけではないことを理解し、適切に活用することが重要です。