農業 兵庫県 創業20年
脱サラをして、父のしていた野菜を育てる仕事を始めて20年が経ちました。祖父の代からの土地を引き継ぎ、広くはない畑で四季に応じた野菜を育てています。春はキャベツ、夏は胡瓜やなす、秋は白菜や大根。収穫と出荷の繰り返し。手を休める間もなく、季節の流れに合わせて作業を進める毎日です。販売先は地域のスーパーや道の駅が中心です。顔写真と名前を載せたPOPが並び、「誰が作ったか」が見える販売方法。そのおかげか、手に取ってもらえる機会が多く、同じ野菜でもよその棚より先に売れることが少なくありません。売れるたびに、やっていてよかったと感じます。
ただ、問題は冬です。ハウスでの加温栽培をしていないため、この時期は収入がほとんどありません。栽培はできても売れる量が限られ、収穫自体が少ないため、どうしても売上に波が出てしまいます。それでも、春の準備を怠るわけにはいかないのが農業です。
今年の春先、長年使っていた耕運機が動かなくなりました。整備して騙し騙し使っていたものでしたが、エンジンから異音が出始め、動力も不安定になっていました。修理では追いつかないと判断し、中古での買い替えを決めました。けれど、冬を越えた直後のこの時期は、手元資金にまったく余裕がない状況です。
借り入れも検討しましたが、時間がかかることが気がかりでした。必要なのは今すぐ使えるお金。そんなときに紹介されたのがファクタリングという方法でした。最初は聞き慣れない言葉に戸惑いましたが、仕組みを調べるうちに「売掛を現金化する」ことの意味がわかってきました。
スーパーとの卸契約で生じている請求分を使って、必要な資金を前倒しで確保する。手数料は発生しますが、それを差し引いても、春野菜の収穫後の土地に、夏野菜用の土地を耕せないと、たいへんなこととなります。『中小企業ビジネスサポーターズさん』を利用した結果として、取引から数日で現金が手元に入り、中古の耕運機をすぐに購入することができました。
これまでなら、こうした場面では家族や知人に借りるしか選択肢がありませんでした。けれど、ファクタリングを知ったことで、資金調達の幅が少し広がった気がしています。もちろん常に使えるものではありませんし、あくまで緊急のときに限るべきだとは思っています。
資金の流れが不安定になりやすい農業にとって、「すぐに使える」というのはとても大きな意味を持ちます。春の耕運が間に合わなければ、夏用の野菜を植えるのが遅れ、販売機会を逃すことにもなります。そうした連鎖を防げたという点で、今回の選択は間違っていなかったと感じています。耕運機を新しくしたことで、作業効率も上がりました。今年は例年よりも畝を増やすことができ、出荷量もわずかですが伸びています。手元に余裕が生まれたことで、気持ちにも少しゆとりができました。
ファクタリングという方法がなければ、こうした流れにはならなかったかもしれません。農業においても資金繰りの工夫が必要な時代です。
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