自営業者、フリーランスにファクタリング需要が高い理由

自営業者、フリーランスにファクタリング需要が高い理由

近年、ファクタリング(売掛債権の買取サービス)が、法人だけでなく、自営業者やフリーランスといった小規模事業者にも広く浸透しつつあります。特にコロナ禍以降、個人事業者の資金繰りが課題となる中で、融資に頼らない資金調達手段としてのファクタリングへの注目度は高まる一方です。本稿では、なぜ自営業者・フリーランスにおいてファクタリングの需要が高まっているのか、その背景や具体的なケースを交えて解説します。


銀行融資に頼れない構造的な課題

まず前提として、自営業者やフリーランスは、銀行融資の審査において不利な立場にあります。開業間もない個人事業主の場合、赤字決算や事業計画の未整備により、融資審査を通過すること自体が困難です。また、担保を用意できるケースは稀であり、信用保証協会の保証を付けても限度額が低く、希望額に届かないケースが大半です。

これに対してファクタリングは、「過去の信用」ではなく、「現在の売掛債権」に着目する仕組みです。フリーランスであっても、売掛債権が存在すれば、審査の通過が可能です。つまり、「事業者本人の信用力」ではなく「売上先の信用力」が重視されるため、大企業との取引があれば信用評価はむしろ高くなるという逆転現象も起きます。


売掛金の回収サイトが長い問題

フリーランスや個人事業主にとって、納品した業務の対価が振り込まれるまでにかかる時間、いわゆる「入金サイト」は大きな悩みの種です。特に、外注の立場で請負契約を結ぶケースでは、検収完了後30日、長ければ60日後という支払条件が設定されていることも珍しくありません。

例として、Web制作会社と契約するフリーランスのWebデザイナーが、3月中に納品を完了しても、請求書の締日は月末、入金は5月末となるケースがあります。これでは4月・5月の生活資金を確保するのに苦労し、カードローンなどの高金利手段に頼らざるを得ないことも出てきます。

このような「待ち時間」の解消にファクタリングは非常に有効です。請求書を発行した段階でファクタリング会社に売却すれば、最短で即日〜翌営業日に資金化されます。これは、特に継続的に案件を抱える事業者にとって、資金繰りの安定に直結します。


固定費がかさむ“個人”の構造的弱点

意外と見落とされがちなのが、個人事業者でも法人並みの固定費を抱えるケースが多い点です。業種にもよりますが、たとえば以下のような支出が毎月発生しています。

  • コワーキングスペースの利用料やオフィス家賃
  • 契約ツール・ソフトウェアの月額料金(SaaS等)
  • アシスタントや外注先への委託費
  • 広告費や営業経費
  • 国保・年金・税金の前払い分

収入がある月はよいのですが、案件が途切れた月でもこれらの固定費は支払い義務が生じます。入金が2ヶ月後、3ヶ月後となる中で、この固定費のために貯蓄を切り崩すと、精神的にも大きな負担になります。

ファクタリングで当面の資金を確保できれば、固定費を回避するための短絡的な値下げや、契約上不利な条件での取引も避けることが可能です。事業の選択肢を残すためにも、柔軟な資金調達が必要なのです。


資金調達手段としての“現実的”な選択肢

クラウドファンディングやベンチャーキャピタルなど、個人が資金を調達する手段は確かに増えました。しかし、これらの手段は手続きが複雑で、審査に時間がかかり、即金性が乏しいのが現実です。また、投資型の資金調達は返済義務がない代わりに、事業への関与が深まったり、報告義務が増えるなど負担もあります。

これに対し、ファクタリングは「請求書を買い取ってもらう」というシンプルな取引です。返済義務がなく、与信も不要で、使い方さえ誤らなければリスクは限定的です。税務上も借入ではなく「売上債権の譲渡」として処理されるため、バランスシートに影響を与えにくいという点もメリットになります。


実例:動画編集フリーランスのケース

動画編集を行う30代のフリーランスAさんは、制作会社から月額40万円の定額契約を受けていました。支払いは「納品月の翌々月末」で、4月分の作業報酬が入るのは6月末です。

5月に機材トラブルでPCが故障。即日修理には10万円が必要でしたが、カード枠は限度一杯。Aさんはファクタリングを利用し、4月請求分のうち30万円を資金化。手数料は9%でしたが、必要な修理費と生活費が確保でき、契約を維持することができました。


“使いすぎ”のリスクとバランス

ただし、ファクタリングは万能ではありません。手数料は業者によって異なりますが、おおよそ5〜20%程度。繰り返し使えば、利益を圧迫します。また、売掛債権の虚偽や二重譲渡などがあれば、法的な問題に発展するおそれもあります。

あくまでも「資金繰りの平準化」のためのツールとして、必要なときだけ使うのが理想です。安易に依存すると、慢性的な資金不足のスパイラルに陥る可能性があります。


まとめ

自営業者やフリーランスにとって、ファクタリングは「売上があっても現金がない」という悩みを解決する、数少ない実用的な手段です。融資が通らない、入金が遅い、固定費が重い――こうした構造的な問題に対して、即時性と柔軟性を兼ね備えたファクタリングの需要が高まるのは、ある意味当然とも言えます。

正しい理解と節度をもった使い方ができれば、ファクタリングは、資金繰りに悩む個人事業者の強力な味方になり得るのです。